最低でも10分切れ負け以上での対局がおススメ
いきなり結論ですが、将棋を強くなりたいと考えるなら、短すぎる持ち時間のゲームはあまりおススメできません。理由としては、3分切れ負けや10秒将棋のような超早指しの将棋で得られる経験値は以下のような理由でどうしても少なくなってしまうと考えるためです。
筆者は将棋ウォーズで対局を楽しんでおり、2級→三段(10分、3分とも)と棋力を上げて昇段してきました。実戦で棋力を上げるにはどの持ち時間の将棋がいいのかについて、経験を含めて思うことを書いていきます。
短時間の将棋の問題点
短時間の将棋では、上達について以下のような問題点があります。
100点の手を追い求めることができない
短い時間の将棋で結果を残すには、100点の手を多く指す能力より、いかに早指しの中でそこそこの手を指し続けるかという方が大事になります。しかし、長期的な棋力向上を目指すのであれば、時間をかけて「100点の手を探す訓練」が不可欠です。
短時間の将棋に慣れると、「すぐに指せる手」ばかりに意識が向き、難解な局面においても「最善手を探す努力」を省略してしまうクセがついてしまいます。これが結果として、棋力の伸び悩みに繋がってしまいます。
世間的にも、将棋の棋力として評価されるものは、時間をかけたときにどれだけ正確な一手を導き出せるか、にかかっていると思います。プロアマ問わず、権威のある大会が超短時間で行われることはありません。最高峰の舞台の名人戦、竜王戦は最も長い2日制です。
将棋ウォーズなどの短時間の対局ではアマチュアがプロ棋士に勝つこともありますが、持ち時間が長くなればなるほど、プロとアマチュアの差は明確になります。これは、プロが時間を使って最善手を見つける能力に優れているためです。
勝因・敗因が本質的なものになりにくい
短時間の将棋では、勝敗が時間切れや凡ミスによって決まることが多くなります。そのため、対局の過程がどうだったかより、「時間を使いすぎてしまった」、「うっかりしてしまった」といった点が勝負の決め手になりやすく、本質的に良い手を指せたかどうかを判断しにくいです。
また、短時間の将棋では指し手の質を磨く意識が薄れて、「相手のミス待ち」の姿勢になったり、「とりあえず相手より速く指す」ことが目的化してしまう場合があります。
じっくりと形勢を押し上げる指し方よりも、「早く指して相手に考える時間を与えない」「多少悪くても相手が間違えればいい」という発想が強くなり、正確な読みを積み重ねる習慣が身につきにくくなってしまいます。
このような指し方が常態化すると、細かい優位を築く意識が希薄になり、結果として棋力向上が妨げられてしまうでしょう。
学びが定着しにくい
短時間の将棋の方が対局回数を増やすことができ、経験を積めるという考え方もあると思います。
しかし、私が思うに、長時間の将棋の方が記憶に残りやすいという点が重要です。
長めの持ち時間の将棋では、1つ1つの局面に時間をかけて考えるため、読みのプロセスそのものが記憶に定着しやすく、学びが多くなることでしょう。
短時間の将棋で深く考えず指した手は忘れやすく、同じ失敗を繰り返しやすいと思います。
対局のテンポが速すぎて振り返りをしない
これは習慣やプレイスタイルの問題ですが、短時間の将棋次々とテンポよく指せてしまうため、対局後の振り返りをせずにすぐに次の対局に行ってしまいやすいと筆者は思っています。
後述しますが、振り返りは非常に優れた勉強法であるので、これをやらないのはもったいないと思っています。
感想戦の重要性
感想戦がプロの対局では必ず行われるように、将棋が強くなりたいと思ったら、感想戦は対局とセットで必ず行うべき非常に効率の良い勉強法です。
感想戦は、真剣に思考した対局を教材として、自分の中での将棋観をアップデートできる重要な機会です。
感想戦で何をするか?
基本的には、AIの検討機能を使うか、自分より強い人に意見を貰うと良いでしょう。
形勢が動いた局面の確認
AIの評価値グラフを見て、大きく自分の評価値を下げてしまったポイントを重点的に見てみると良いでしょう。
評価値を下げてしまったポイントというのは何かミスがあったということであり、チャンスを逃してしまった、もしくは、隙を作ってしまったということです。そして、最善の手順を見て参考にする、もしくは気付いていても指せなかったなら、自分の将棋観がその点は間違っているということになるため、修正の必要があります。
迷った局面の再検討
特に時間を掛けた局面をAIで検討してみると良いでしょう。
複数の手で迷った局面なら、その後の想定局面を比較する。何をするのか全く分からなかった局面なら、AIの想定手順を見て、どのような方針で指せばよかったのかを吸収すると良いです。
自分の考え方のクセや課題を見つける
感想戦を何局もしているうちに、自分の中の課題や、考え方のクセが見えてきます。例えば、無謀な攻めをして形勢を損ねていることが多い、逆に守備的すぎてチャンスを逃しているなどです。こういったクセを意識して矯正できれば最善手を選べる可能性が上がるはずです。
また、終盤で詰みがあったのに何度も逃している、などの課題も見えることもあるでしょう。こういった気付きは長期的に自分の棋力を向上させるために重要だと思います。
これについては、自分より強い人に意見をもらえれば理想的だと思います。
まとめ
将棋を強くなるためには、時間をかけてしっかりと考える+じっくり考えた将棋を感想戦をして振り返るというのが極めて重要だと思います。これをしていれば、何かインプットをしなくても、徐々に棋力は上がっていくと思っています。
隙間時間で遊べて、アドレナリンが出るような短時間の将棋は面白いと感じるのは筆者も同意ですが、それは娯楽と割り切って考えるのが良いと思います。
ぜひ実践してみてください!
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